Nickey44Aを作りました

どんなキーボードか一言で表すと「最強に小さくて薄くて軽いけど妥協しないキーボード」です。
特徴としては以下です。
- 44キー、オーソリニア
- 17mmピッチ
- ロープロファイル
- 単4電池1本駆動
- 薄型、軽量
- 完全無線分割
- マグネットで合体可能
時間が無い方は以下のシンプルな紹介ページをご覧ください👍️
Nickey44Aを作った理由
自分が最初に作ったのはAの無い「Nickey44」というキーボードです。薄く、軽く、バッテリが入っていることを感じさせないデザインに可愛く落とし込めたと思っています。

今回のNickey44Aはその派生で、末尾にAを付けることで単4電池を表すAAAという文字に寄せた(4はAっぽいので44AがAAAに見えなくもなかったり)という感じです。
リポバッテリではなく、交換可能な乾電池を使いたかった
昨今リポバッテリへの扱いや規制が厳しくなってきています。発火リスクもありますし何より先の未来にそのバッテリを入手できるか不明、というのもあります。これは世のバッテリ製品全般に言えることです。
乾電池であれば、まあ10年後20年後でもおそらく手に入るだろうという安心感があるのと、欲しくなったときに例えばコンビニや100均でも買えるので入手性が高いというのも挙げられます。
より薄くしたかった
バッテリ版も相当薄いのですが、バッテリソケット自体の厚み4mmとバッテリケーブル、バッテリー自体の厚みがボトルネックとなり、ボトムからトッププレートまで8.5-9mmでした。
これらがなければもっと薄く出来るよなぁとずっと考えていて、バッテリ関連のパーツがなくなるとchoc v2ソケットの約2mmが最厚となり、ボトムケースの厚みも部分的に0.5mmとする事で今からさらに2.5mm薄く出来るぞ…! となったのも開発のきっかけでした。思いついてからは形にしたくて眠れなかったです。(今も眠れない)
単4電池で動かしたい。しかも1本で

乾電池にも様々種類があり、世の機器で一般的なのは単3、単4電池あたりかなと思います。
単3は、より薄く軽くという思想から少しはずれるので却下。より小さな単6電池なるものもあり薄くできますが、あまりにも普及していないのがネックとなり却下。単4電池であれば程よい電池持ちと入手性があり、充電池も豊富に展開されています。
また、基本的に3V入力くらいの機器を動かすには2本直列で並べる事が多いと思いますが、ミニマルに、という思想で設計するとスペース的に1本までしか許容出来なかった感じになります。ただし、詳しくは省きますが1本で駆動させようと思うと昇圧だったり色々と大変な部分ももちろん出てきます。(大変ですよ)
既存の電池ボックスを利用しない

単純に既存の電池ボックスを採用して余った位置に配置すれば完成なのですが、アンケートを取った結果ボックスの黒い部分がそのまま見えるのはほぼナシで、なんらかのカバーを付ける必要がありました。

そうなると上からカバーを付ける必要がありますが、思った以上に膨らみ厚みが出てしまうこととトッププレートとの隙間がきになったりしてあまりスマートではない印象になってしまいました。
という事で電池ケースも自作する決意をしたのです。また、トッププレートとの境界も消したかったので、トッププレートと融合させて裏から電池を差し入れできるようにしました。

最薄6.5mmを目指す

理論上は色々重ねた時の厚みを7mm以下の6.5mmまで持っていけます。上から順に具体的には
- トッププレート: 2mm
- PCB(基板): 1mm
- スペーサー: 2.5mm
- はんだ付け後のpcbからchoc v2までの高さが1.8-2.2mmくらいあり、余裕をもって2.5mm
- ボトム厚: 1mm
- 0.5mmでも作れるがどう作ってもふにゃふにゃだったため却下
となります。
また、画像からも分かる通りボトムとトップにRで曲面にしていることで数値よりも数段薄く見せています。AppleのMacbookとかもよくそうしていますね。
薄さと剛性の両立
単純に薄さ軽さを追求するのは簡単です。しかしキーボードには打鍵感という忘れてはならない感覚があり、薄さの中で最大限の剛性や密度を出す必要がありました。
数十回の印刷を重ね、手でたわませたりひねったりしてみても感覚的にしかわからなかったため、そもそもモデルをシミュレーションして定量的に可視化するところから始めました。それで良さげなものを選出して印刷しようという流れです。

まずはシンプルな構造のものを基準値としてそこから派生を作り、シミュレーションした剛性とその検証で増加した体積も加味して検討します。(でないと、無限に厚く大きくすれば最強になるので) 最小の体積で最大の剛性を出していきましょう。全て同一荷重条件です。

こちらがほぼ初期の状態で、右側の図では中央を押し込んだときに結構たわんでいる事が分かります。(青から赤に近付くほどたわんでいるという事です。) 興味深いのはcase01で外壁を2mmから3mmに増やしても右側のたわみを見るとほぼ変わっていないのが見て取れると思います。(つまり、体積が結構増える割には剛性向上に寄与しにくい)

ひとつ前の分析結果から見てぱっと分かるのが、十字のリブを入れた時のたわみ剛性が右側の写真で見て取れると思います。効いているという事ですね。
最後のグラフが剛性と体積を加味したスコアグラフなのですが、リブの幅の量に対して剛性が線形増加している傾向にある事が分かりました。加えてリブの数自体も多いほど剛性が高まりそうなので適度にぎっしりリブを入れてあげるのがコスパ良さそうという結論になりました。
開発中に苦戦したこと
マグネットまわり

ボトムプレート内部に埋め込むマグネットの受けの調整がきつすぎると圧入が大変になり、緩いとスッポ抜けてしまいます。マグネット側の誤差と印刷誤差もあり無限の調整が必要でした。(調整済み) (大変だった)
電池カバーまわり

既存の電池ボックスを使わない以上カバーも自作せざるを得ませんでした。はまり具合もちょうどよく一体感のある仕上がりに持っていくのが大変でした。形状としてはマウス裏の電池カバーなど既存の製品のカバーを大量に参考にしました。
昇圧回路

電池1本駆動を決めた瞬間から何らかの方法で昇圧回路を組み込む必要がありました。

回路データと設計を公開してくださっているcormoranさんに大感謝しながら数週間くらいかけて理解を深めつつ基板に落とし込んでいきました。本当にありがとうございます。
完成したNickey44A

という事で完成しました。自分で言うのもあれですが結構格好良く出来たと思います。お気づきかもしれませんがバッテリ版が「かわいい」という印象だったものから、格好良いスマートな印象に変わりましたね。(かわいいのも良いことです。)


また、諸々未装着の本体だけの重量が左右合わせて125gと超軽量に仕上げる事が出来ました。全部込みでも221gくらいです。(KazyCap、霧スイッチを含む) 重量を公表しているキーボードはあまりないかもしれませんが、乾電池採用キーボードとしてはかなり軽い部類だと思います。

サイズ的にはHHKB比でこのくらい小さいです。HHKBも世間的にはかなり小さなキーボードだとおもいますが、それよりも小さいです。
実際に使ってみて
手前に電池がありますが、自作ケース一体型にしたおかげで手のひらが当たることはなく快適です。また、こだわったボトムプレートのおかげか薄いながらも打鍵感が非常に良くていい感じです。
バッテリモデルより薄くしたことでパームレストが無い状態での打鍵が一層心地よくなりました。また、あまりいらないんじゃないかと思っていたボトムプレートのマグネット合体が意外と便利で、デスクで小作業を刷るときに合体させて立てておくなどの使い道もありました。
おわりに
長々と書き殴りましたがここまで到達した方はお疲れ様でした。分からないことや聞きたいことがあればDiscordサーバーやXのDMまでお願いします。(Discordサーバーは雑談チャンネルなどもあるので気軽にお越し下さい。)
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